アリとキリギリス
禅は熱く語った。
「俺は、高校に行ってバスケットの腕を磨き、大学に行って、その後は実業団。そしてチャンスがあったら、アメリカのプロバスケットボールリーグに挑戦するよ」
そう夢を語る禅を見て、賢一は微笑んだ。
「お前なら出来ると思うよ」
「ああ、ありがとう」
禅はそう礼を言うと、聞き返した。
「お前はどうするんだ?」
「俺は、もっと勉強して国立大学に入り、将来は官僚になるよ」
「官僚?」
「ああ、俺はお前みたいに夢を追えないからな、だから確約が欲しいんだ、決められた確証のある人生が……だから、国家公務員になる」
禅には、良く理解できなかった。
「官僚? お前、難しいこと言うな」
「お前がうらやましいよ、夢を追えるんだからな」
「そうかな、まあ、バスケットが好きだから……それに、俺にはバスケットしか無いからな」
「それも才能があるから言えるし、出来るんだよ」
「………」
「お互いに夢に向かって頑張ろう」
「ああ、頑張ろう」
そう言うと、それぞれのクラスに入っていった。