第四章 インドは一筋縄ではいかない

③ 厨房を見るとレストランで食事ができない

総務も管轄する駐在員の務めとして、2年に1度はホテルの検査をしていた。特に厨房のチェックをしていたが、コルカタではもちろん5つ星(?)クラスのホテル2軒は合格だったが、4つ星ホテルでも合格レベルに入らないところがある。

3つ星クラスのホテルではコックの服装は汚いし、調理台も汚れている。調理台の側には石鹸すらないし、スラムの人間と同じような汚いぼろを着た床掃除人が調理台の周りを掃いていたり、ごみ出しをしたりしている。

市内の高級レストランの厨房を見る機会があり、4つ星ホテルよりレベルは上だと思ったが、それより下のレベルのレストランは怖くて見る気にもなれなかった。ホテルのレストランは高いので、通常は市内のレストランで食事をすることになるが、厨房を見てしまうと怖くて食べられなくなることを懸念したものだ。

もちろん厨房を見ないからといってお腹をこわさないことにはならない、年に日本人駐在員の何人かが食あたりになる。駐在員はその国の雑菌には免疫ができているはずだが、こんな衛生状態だからどうしても食あたりは避けられない。

ホテルやレストランの厨房がこんな状態だから、屋台の食事はさらに危険だ。中流以上のインド人は屋台では食べないようにしているが、ある5つ星ホテルのインド人営業マンは道路端の屋台の食事が大好きで、毎日屋台で昼食を取っていた。周りのインド人に注意されていたが聞かずに食べ続け、ついに肝炎に罹って3カ月ほどダウンした。

④肉、魚の市場

初めてインドに来られた方を半日市内観光にお連れするときの定番コースに、コルカタ(カルカッタ)市場がある。市場では野菜・果物だけでなく、肉・魚なども売っていて、誰でも購入できるが、その市場が問題。

鶏は生きたまま籠に入っているのを売っていて、一緒に買いに行ったメイドが触って肉付きをチェックし、選んだら、汚れた服を着た売り子が掴んで、市場の裏に行き、首を落としてくる。