参─嘉靖十五年、宮中へ転属となり、嘉靖帝廃佛(はいぶつ)の詔を発するの事

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「ううむ……そうは言ってもなあ……厚誼をむすぶときや、別れにのぞんでは、したしく酒を酌みかわすのが、昔からのならわしだ。酒後(しゅご)、君を留めて明月を待つ。また明月をもって、君が囘(かえ)るを送らん、とな」

「お粥をお出しするのがいいと思います。ね、叙達(シュター)さま」
「う、うん……」

すっかり場を取りしきっている曹洛瑩(ツァオルオイン)を見て、住職は、目をほそめた。

「はっはは……たのもしい娘御だ。それはそうと、お粥なら、この寺にもありますぞ。もっとも、坊主のつくる粥じゃから、料理の腕をあげた叙達(シュター)の口にあうかどうかは、わからぬがのう」

「滅相もありませぬ。ここのお粥は、天下一です。私は、ここのお粥で、生き返らせていただいたようなものです。つくって頂けるのなら、ありがたく、ちょうだいします」

洛瑩(ルオイン)が笑う。父親も、住職も、そろって頤(おとがい)をゆるませた。座に、和気がひろがり、愉しい会話がはずんだ。

曹察(ツァオチャー)の口から、つぎの言葉が出るまでは――。

「おかげさまで洛瑩(ルオイン)も、輿入れ先が見つかりまして」

心中、雷鳴がとどろいた。聞きちがえたかと思ったほどだ。


「ほう、こんなによくできた娘さんを迎えられるとは、幸運な御仁じゃな。いったい、どちらへ嫁ぎなさる?」
「そのお方は、紫禁城(しきんじょう)におわします」