第二章 教育の目的は子どもの幸せ

(5)私が考える「自らの意志による幸せ」

2つめは、「困難に負けない強さをもっていること」です。

生きていくうえでは、人間関係のトラブルや病気などの困難はつきものです。学校の中でいえば、「友達とけんかしてしまった」「がんばって勉強したのに、成績があがらない」「文化祭の準備がうまく進まない」などです。

人が生きていくには、困難だらけなのに「困難がないことを幸せ」だと思っている人が多いように思います。私は学校で、悩んでいる子どもに話します。

「困難があることが不幸なのではなく、困難に負けてしまうことが不幸なんだよ」と。困難にぶち当たった時こそ、上がるか下がるかのまさに分岐点にいるのです。

日本の医学者、野口英世は、幼いころに左手を大やけどしたことは有名です。それが原因でいじめられたようですが、左手の手術を受け、自由に動くようになった手を見て「医者になって苦しんでいる人を救いたい」という思いをもちました。左手を大やけどした時点で「自分はなんて不幸なんだ」と考え、努力することをやめてしまえば、その後の功績はありません。