第2章 補助金の論理

2 補助金の必要性、正当性

補助金はなぜ必要か、経済学的回答

一方の「外部経済」の例は挙げるのが難しいが、私が経済学を学んだ四十数年前の教科書には、養蜂業者と近隣の果樹園の例で説明されていた。養蜂業者は蜂蜜を採取するために蜂を育てているのであって近隣の果樹園のためにではない。

しかし、結果として果樹園が恩恵を受けているというわけだ。最近では、教育や研究開発費の外部経済効果がさかんに研究されているようだ。

外部経済がある場合は、市場に任せると社会的に最適な生産量がどうしても下回る(当事者は自己に帰属する便益しか考慮しない)ので、政府が供給を増やすべく補助金を出す必要がある。これが経済学の回答である。

さきに挙げた根岸の公共料金にかかる補助金の例は、外部経済、外部不経済にはストレートに結びつかないが、電気や水などの公共財は、他の商品と違って需要と供給によって価格が決定されるものではない。つまり、市場をとおしていないので外部性の考え方は適用されているといっていい。

宮本憲一は前掲『補助金の政治経済学』の「編者あとがき」で、最近東欧の社会主義国においても農業補助金の打ち切りや市場原理の導入が始まっているとし、「これはあたかも、アダム・スミスの市場経済原理の全面復活を思わせる」と書いてからこう続ける。