アリとキリギリス

賢一は学区内の公立中学に進学した。禅は親の奨めで私立中学への進学も考えたが、地元の友達と離れるのが嫌で、賢一と同じ公立中学に行く事にした。二人は、クラスは同じにならず、隣のクラスだった。

「賢一、クラスは違うけど、仲良くしような」
「ああ、宜しく頼むよ」
「ところでお前、部活は何かやるのか?」
「部活か……」

運動音痴だった賢一は、運動部には入りたくないと思っていた。

「禅、お前は何かやるのか?」
「俺は、バスケットボールをやりたいと思っている」
「バスケか……」

賢一は思った。“運動神経の良い禅には合っているな”そう考えていると、禅が言った。

「賢一、お前も一緒にバスケ部に入らないか?」

余りに突然で、考えられない事を言われた賢一は戸惑った。

「え!? 俺は無理だよ! 背も低いし、運動音痴だし……」

そう言って笑う賢一を、禅は真面目な顔で見ていた。

「だから一緒にやろうって言っているんだよ」
「?」
「お前が言うように、お前は背が低くて運動音痴だ。だから一緒にバスケットをやるんだ。そして少しでも背が伸びて、運動神経が良くなったらいいだろ?」

賢一は驚いた顔をしていた。

「それに俺が一緒だから心配ないよ」

禅は微笑んだ。その言葉と笑顔を見た賢一は迷っていた。