「でも、出来るかな?」
「何言っているんだ、誰だって初めは素人だぜ。俺だって、バスケットをやった事はあるけど、遊びでやっただけで、ほとんど素人だぜ、俺もお前も同じだ」
「………」
「どうだ? 一生懸命努力して頑張ってみよう、人生を変えるんだよ、一緒にカッコ良く羽ばたこうぜ!」

賢一は、少し不安だったが、禅の押しと情熱に負けた。

「そうだな……」
「じゃあ、決まりだな」

禅は嬉しそうに笑った。それに釣られるように賢一も笑った。

禅と賢一はバスケットボール部に入り、三カ月が経っていた。放課後の体育館に怒鳴り声が響いた。

「お前! 何回言えば分かるんだ!」

あまりにも上達しない賢一に、三年生の先輩が切れていた。

「す、すみません……」
「罰として体育館十周!」

賢一はうなだれた。それを見ていた禅が割って入った。

「先輩、勘弁してやってください。こいつ運動神経が悪いですけど頑張っていますから……」

禅は賢一が下手な事を苦にして、一人で居残り練習をし、休日も練習している事を知っていた。その言葉は、そこから出た言葉だったのだが……逆に、その言葉が三年生の怒りに油を注いでしまった。

「お前、いつから先輩に指図するほど偉くなったんだ?」

禅はマズイと思ったが遅かった。

「いえ、そう言う事じゃないんですよ……」
「じゃあ、どういう事だ?」