第1作『ブルーストッキング・ガールズ』

呉服屋の主人だけあって、落ち着いた茶の着物を着こなしている容姿は、トメの目にもすてきに思えた。

「お友達かい。見舞いに来てくれたんだね、いつもありがとう」
「ト……トキさんっていうの、尋常の頃の友達よ」
「そうかい、こんにちは。美津は今日も顔色いいな。今村先生も、安定してるっておっしゃっていたが、この頃夜遅くまで起きているって話じゃないか。無理をしちゃいけないよ。早く治さないとね……えーと、トキさん」
「は……はい」
「この子はね、体が弱くて、せっかく入った女学校も、三月も行かないうちに病気になってしまって休んでいる。こうやって家の中で寝ているだけの生活だ。でもこの部屋は友達が多くて、いつも人だかりがしている。お陰で美津はいつも笑って明るく過ごしていられる。トキさんはどこか奉公に出ているのですか。……トキさん、いつまでも美津のそばにいてください。そうだ、よかったら美津の看病をしてくれないだろうか」
「えっ……」