精神症状としては、怒りっぽさ、意欲低下、抑うつ症状、感情の障害がみられ、症状が進むと、せん妄や被害妄想などが現れます。脳血管障害の中でも、小さな脳梗塞を何度も起こす脳・小血管病性「多発性脳梗塞」の場合、目に見える障害がなく自覚症状もないため、発症しても気づかないことが多いのです。ところが、発症から10年以上が経過すると、高い確率で血管性認知症になるといわれています。

[図1]認知症を呈した脳梗塞のCT像(3例)
黒く見える領域が梗塞巣
[図2]脳・小血管病変性認知症のMRIフレア画像
白質変性所見と多発性ラクナ性脳梗塞が認められる

予防は生活習慣の改善などで可能です。脳梗塞や脳出血などによって起こる認知症の危険因子は、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、運動不足、肥満、食塩の過剰摂取、飲酒、喫煙、糖尿病、心疾患(不整脈など)などです。つまり、生活習慣が病気の発症に大きく関係しています。

心疾患のうち塞栓性脳梗塞を来す最も多くて危険性が最も高いのは心房細動という不整脈です。その他、奇異性脳塞栓症といって右→左シャント疾患(卵円孔開存、心房・心室中隔欠損、肺動静脈瘻など)で塞栓症脳梗塞を起こし得ます。

心房細動は突然重症の卒中(半身麻痺、失語、意識障害など)を発症する危険性だけでなく、本人も周囲の人も気づかないような小さな梗塞が度重なって血管性認知症になっていきますので、早期の発見と治療(カテーテルアブレーションなど)が必要です。治療は、薬と身体活動を高めるリハビリが主体です。

介護で注意点は、脳血管障害の再発予防に努める、自発性低下や廃用症候群になりやすいのでデイケアやデイサービスなどを利用して活動性を高める、嚥下障害や歩行障害を伴うことが多いので誤飲・誤嚥・肺炎や転倒を防止するなどです。