第2章 社会
40年
普段なかなか聞けない健康問題について語ろう。そんな趣旨から地域の依頼に応じ「巡回健康講話」を行っています。
その日も外来が一杯で約束の時間ぎりぎりになってしまいました。「今日も昼飯は抜きか」。そんな思いで出かけた会場にはとても素敵な食事が用意されていました。
普段から皆さんがそれぞれお手製のお料理を持ち寄っての会合であり、その日もお昼は皆さん一緒に食べられ、私もお裾分けを頂けたという訳です。集まられた方々は皆さん顔見知りです。
普段の外来ではなかなかお話しできないことなど、皆さんの質問に答える形の座談会です。地域はいくつもの自治会に分かれていますが、どの自治会にもこのような集まりがあり、毎月開催されているのです。
「もう40年以上も続いています」
「でも最近若い方がなかなか入って来ない」
うつ病や認知症の予防、早期発見のためにこのような地域の集いが必要だと化石医師は考えています。
他人との関わりを厭う世界が形成され孤独な存在となってしまった中で、従来では考えられなかったような犯罪も生まれています。コミュニケーション不足。
「この料理は美味しい」「少し味つけに失敗した」「作り方を教えて」など同じ物を食べながら様々な会話が飛び交い、人間関係が形作られていきます。地域の先人たちはそのことを知っていました。だからこそこのような集まりが40年も続いているのでしょう。
「? 今日も女性ばかりだ。男は何処へ行った?」
ありました。田舎地域では消防団制度があります。決して強制ではありませんが一定の年齢に達した若者達は入団することが多い。