第1章 認知症とはどのような病気か?

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)を知る

認知機能は正常範囲にあっても、一定以上の記憶障害を示すグレーゾーン(正常と認知症の中間に位置づけ)とされる軽度認知機能障害(MCI)が注視されています。軽度認知障害者の1/3~1/2が3年以内に認知症に進展する(年間約10%)といわれることから、MCIは認知症予備軍(前兆)と認識し、この段階を重くみることで認知症の早期発見や予防に役立つとされています。MCIの要約は次の5項目となります(Petersenらにより2001年に定義されたものをもとに作成)。

1)記憶障害の訴えが本人又は家族から認められている
2)日常生活動作や社会生活には問題はない
3)全般的認知機能は概ね正常(病気とは呼べない状態)
4)正常な高齢者に比較して記憶が低下している(年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する)
5)認知症ではない

検査で、「健康」(CDR0)と「軽度認知症」(CDR1)との中間の状態である0.5と判定されると、概ねMCIに相当します。MCI患者の場合、通常、記憶力の軽度の低下(記憶障害)を訴えても日常生活に大きな支障はなく、記憶を除く認知機能は正常範囲です。このため、MCIは認知症とは区別される状態とみなされます。本人が認知機能の低下を自覚した場合、または周囲の者が認知機能の異常を疑った場合、まずMCIか認知症かを選別する必要があります。

[図1]MCIの臨床認知症評価表

[図2]認知症(アルツハイマー型)の重症度別の主症状