翌日より高倉は社外取締役二人を含む七人の幹部の解任作業に入った。

ケニー・ブライアントとロッド・モーローの解任で、ある程度予想をしていたのか? 意外にすんなりと辞めてくれた幹部もいた。特に社外取締役の解任は問題なく進めることが出来た。

しかし怒り狂い、高倉に、
「ファック・ユー」とか「イエロー・ジヤップ」「今に見てろ、あとで吠え面をかくことになるぞ」
といったたぐいの、あらゆる罵詈雑言を浴びせかけて抵抗した幹部も数名いた。

中でも技術担当役員のフランコ・ハウゼンの反発は大きかった。

「私は技術担当であり、リトレッドはじめ技術関係の開発や改善には十分貢献しているつもりだ。会社の業績悪化を招いた杜撰な経営や不祥事には関与していない」

「あなたは会社役員という立場だ。技術のことだけやっていればいいというものではない。役員として会社全体のことに関与しなければならない。関与していないというのは、責任を回避していたということだ」

高倉は努めて冷静に言った。
フランコは反論する。

「関与していなかったという意味は、自分は不祥事はやっていないということだ。他の役員は公私混同していたらしいが」
「見て見ぬふりをしていたのか。会社役員としてますます無責任だ」

この言葉に、
「イエロー・ジャップにがたがた言われる筋合いはない。私はこの会社を辞めない」
と、ついにフランコは言ってはならない言葉を発した。

「あなたの机の中身はもうすでに全部段ボールに詰めて、ドアの外に出してある。会社に残りたいならその段ボールを持って会議室にでも行って仕事をやれ」

これでフランコ・ハウゼンは、諦めて会社を去った。

こうして高倉は固い決意のもとに、全幹部の首切りをやり通した。
『トカゲの頭切り』は終わった。