経過を注意深く見守り、登校しぶりが続くようであれば、専門医に診てもらうようにしましょう。
もう一つ大切なことは、不登校のお子さんの目線に立って考えるということです。不登校のお子さんと話すと必ずといっていいほど聞くセリフがあります。
それは、「どうして学校へ行かなければならないのか」というものです。
お子さんたちの言うことはごもっとも。私たちは、知らないうちに学校へ行かされ、行くものだと躾けられてきました。基本的な勉強をして将来仕事に結びつけるためとか、クラブ活動などで社会性も高めていくためとか、友達を作るためとか、そんな説明をされて入学するお子さんはいません。みんなが行くから、親に行くように言われたから行くのです。小・中学校ならば義務教育だから行くというだけです。
親しい友人がいて学校が楽しいものであれば、そのようなこともいちいち考えなくてすむのですが、自閉スペクトラム症のお子さんは、繊細で傷つきやすく、先生や同級生とのコミュニケーションや学校へ行くこと自体に苦痛を感じることも多いため、「なぜ学校に行くのか」という疑問が生じやすいのです。
そのような疑問を投げかけられた時、私は彼らにこう言います。
「とにかく行きたい時に行ってみればいい、生徒と会うのが嫌なら放課後の5分でもいいし、部活がやりたいなら部活だけでもいいんじゃないかな、そうやっている子もいるよ」
他人と少しでも触れ合うことと、学校の空気を少しでも吸うことで、学校にも楽しいことがあることを、わかってほしいのです。私の外来での経験として、実際に放課後や部活だけしか行っていないお子さんもいることを話すことによって、彼らが持っている学校に行くというハードルを下げてあげるのです。
まずは、学校への恐怖心を取り除いてあげる。そこからDさんのように、徐々に慣らしていけばいいのです。
究極的には、校門で先生とハイタッチだけして帰る子もいます。これを私は「ドライブスルー登校」と呼んでいます。