第2章 障害のある子どもの理解
増えている? 発達障害
発達障害の子どもの絶対数が増えてきたのか、相対的なものなのかの明確な答えはなかなかでません。しかし、小・中学校の児童生徒数は減少してきているにもかかわらず、特別支援学校や特別支援学級、通級指導の対象となる児童生徒の人数は増えているのが現状です。それは、次のような理由が指摘されています。
①医療での診断基準が変わってきた
2013年にDSM‐5が改訂されました。DSM‐5とは、お医者さんたちの精神疾患にかかわる診断基準のマニュアルで、これをもとに診断名がつきます。
診断の項目の対人関係の質的障害(社会性、コミュニケーションの障害)、反復行動に加え、それまで診断基準になかった「感覚障害」の項目が増えました。一つの診断基準が増えるということは、その対象となる子どもも増えるということです。
②医学の進歩による低体重出生児、医療的ケア児の増加
低体重で出生する子どもが増えています。いわゆる未熟児で生まれることは、心肺機能に影響し、それが脳の障害となるリスクを増やします。
また、医療の発達によってNICU(新生児特定集中治療室)が充実してきました。これにより、吸痰(たん)や胃ろう、導尿を必要とする医療的ケアを必要とする子どもが増加しています。
③児童虐待(身体的、心理的、性的、ネグレクト)の増加
平成30(2018)年には、全国の児童相談所への児童虐待の通告が年間13万3千人に上りました。これは、10年前と比較しても格段に増えています。しかし、この他に市町村で対応している虐待も数多くあります。
児童相談所への全国共通ダイヤル「189」(いち・はや・く)ができ、通告しやすくなりました。夫婦喧嘩を子どもの面前でするのは面前DⅤ(ディーブイ)といわれ、これは心理的虐待です。
小児精神科医の友田明美氏は、乳幼児期に虐待を受けると脳の発達に影響を与えると指摘しています。また、不適切な養育(マルトリートメント)や虐待による子どもの脳へ及ぼす影響を指摘します。
さらに、発達障害と虐待は相関関係があるともいわれています。発達障害がある子どもは、その行動特性から親から虐待を受けるリスクが高くなるのです。