第二章 釣りもアレも人間は新奇好き
惚れ薬・イモリの黒焼き異聞
もう一つ小話。
ある薬師の男、イモリの黒焼きを作ってイモリ印として売っていた。
ある日、若者がその薬を買いに行ったところ、ちょうど、薬師の男が外出して留守だったので、女房が効能を説明して渡したところ、若者は薬を受け取るなり、女房に振りかけ、そのまま女房を奥に連れていきことに及んだ。
女房は薬の手前、拒む訳にもいかず、そのうち女房もその気になって、二人は散々楽しんだ。
「こんなによく効く薬だとは思いませんでした」と若者はお礼を言って帰って行った。夫が帰宅して、女房はありのままを話した。
「誰がそんな男としろと言った」
「だって、しなきゃお前さんの薬が効かなかったことになるじゃないか、それに私も効いたような気がしたんだよ」
さらにもう一つ。
体つきの立派な伊達男(だておとこ)が惚(ほ)れ薬を買いに行くと、店の女房が男を見てから、
「よく効きます、効き目は私が保証します」
早速、薬をほんの少しその女房に振りかけてみたところ、女房は急に妙な目つきになり、
「幸い亭主は留守ですから、どうぞ奥へお通りになって」
(参考駒田信二著『艶笑動物事典』)