第二章 釣りもアレも人間は新奇好き
惚れ薬・イモリの黒焼き異聞
子どもの頃、ミミズを餌に野ブナを釣っていると、よくイモリが釣れた。
イモリの当たりは独特で、ウキにピョコピョコと当たりが出る。やがてウキはゆっくりと横へ動き出す。イモリが餌をくわえて川底を歩いているのだ。合わせると、なんの抵抗もなく、イモリが両手足を広げ、赤い腹を見せて上がってくる。
ところで読者はイモリという生物を知っているか。形はトカゲに似ている。脊椎動物・両生類・サンショウウオ目・イモリ科である。大きさは一〇センチ前後・体色は黒褐色、腹は鮮やかなオレンジ色、その中に不規則な黒斑がある。
尾は縦に扁平(へんぺい)で泳ぎに適している。水の綺麗(きれい)な池や小川に棲むが、晩秋になると陸に上がって冬眠する。
子どもたちは「イモーラン」と呼んで嫌(きら)っていた。嫌う理由は三つある。
食べられない、釣り味がない、嫌な臭いがする。
こんなイモリに特筆すべきことが一つある。メスと思しきイモリの下腹部が驚くほどに艶(なま)めかしい。後ろ足と尾の付け根の腹面にビックリするほどセクシーな性器があるのだ。
真っ赤な腹の後部に薄ピンクのソレが口を開いている。溶けるほどに柔らかく大きく盛り上がり、典型的な土手高、ふっくらとしたまんじゅう仕立てで、しかも真ん中がズバッと深く割れ、いつもトロトロに濡れそぼっている。