「いや、さすがに送ろう」

「でもお仕事中では?」

「仕事と私用もあるから気にするな」

歳蔵からの申し出をこれ以上断るわけにはいかず、その申し出を受けることにして歳蔵が歩き出したところを斜め後ろからついて行った。お互いに黙って歩いていたが、お琴の自宅の近くまで来たときに歳蔵がお琴に声を掛けた。

「お琴さん」

「えっ……はい」

「後日、予定を空けておいてくれ」

「?……はい」

歳蔵はそう言ってお琴を送り終えるともと来た道を戻って行った。歳蔵の背中が見えなくなるまで見ていたお琴は自宅のほうに振り向いた。両親が驚いた顔で店先に立っていた。

「ただいま戻りました」

「ああ、おかえり」

「今の方ってもしかして」

お琴が両親に今日の出来事を簡単に話した。気分転換に散歩をしているときに歳蔵と偶然会い、自宅まで送ってもらったこと、歳蔵から後日予定を空けておくように言われたことを伝え、お琴の両親は安堵の表情を浮かべた。

昨夜のことでお琴のことを心配していた両親にとっては今の話はとても良いものだったと感じたのだろうとお琴は考え、それを汲み取って両親に笑顔を向けた。

次回更新は11月12日(木)、20時の予定です。

 

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