【前回の記事を読む】「大望あるあの人の邪魔にならないでしょうか」土方歳三の許嫁となったお琴。彼の本心が分からず、両親に悩みを打ち明けると…
偲ぶ恋の熱田めぐり
「土方様が許婚として許してくださったのだからそれだけでも嬉しいですが、どうしても心配になってしまって……」
両親が良い縁談として持ってきたので、許婚であれ、決まったことを否定したいわけではなかった。ただあの日見た歳蔵の瞳には、奥に何かを望むようなものが確かにあった。それだからこそお琴は悩んでいた。
「こちらからお断りすることはできないことはわかっていますから。不満があるわけではありませんから」
「……すまない」
「謝らないでください。この縁談の話を聞いたときにお伝えした通り、二人が決めたことであれば問題ありません」
そう両親に向かって笑ったお琴に両親は胸を痛めていた。自然に笑っている表情だが、さきほどの悩みを聞いて、無理をさせてしまっていると思ってしまった両親はどうすればお琴の悩みを取り除けるだろうかと考えたが、この場では答えは出ることはなかった。
両親としては一人娘であるお琴には幸せになってほしいと願って受けた縁談であった。しかしお琴に無理をさせるくらいだったらやはり受けるべきではなかったのかという悩みも生まれてしまった。できることならお琴の悩みが解消されることを両親は祈るのみであった。
今できることは少しお琴に休みを与えることだけだった。
両親との話の翌日。その日も店の手伝いに出ようとしたお琴だったが、両親に止められて強制的に休みを取ることになっていた。店に出られないならと思ったお琴は気分転換に外出することにした。
一人で家の中にいたとしても無意識に店に出てしまうかもしれないとお琴が考えてしまったということもあるが、せっかく両親がお琴に休みを取らせようとしている気持ちを無下にすることもできず、行き先も考えず、外を散歩することにした。
(お店が休みでもないのに外出するなんていつ振りでしょう……)
お琴がのんびり歩いていると、風呂敷を持って駆けていく子どもたちとすれ違う。すれ違っていった子どもたちを見て幼い頃のことを思い出していた。幼い頃から両親が営む店の手伝いをしていた。