錦生の投げ捨てるような言い方に、斗真がむっとした声を出す。お互いの抑えようのないいらだちがそのまま声に出ている。
「わかった。じゃあ、とがしんに頼もう」
茶道部顧問は、書道部顧問も兼ねている国語の教師、富樫丈太(とがしじょうた)。親しみを込めて、とがしんと呼んでいる。
「プログラミング部に協力してもらえるように、とがしんからプログラミング部顧問にお願いしてもらう」
「嫌だ!」
「し! 声が大きい……錦生」
そう言って、柊は後ろに視線を投げた。錦生が首をすくめる。
ここは情報科学室だ。教室の後方にはプログラミング部専用のスペースがある。パーテーションで区切られ、物音はしないが、昼休みだからといって誰もいないとも限らない。
「どうして嫌なんだ」
斗真が声を潜めて言い、錦生も小声で返す。
「クラウドファンディングの時、誰かが温室プールの資金集めだってリークして嫌がらせしただろう。事情を知っていたのは理事会と俺たちだけ。そして俺たちはいつもここで話をしていた」
確かに、資金集めの困難さに輪をかけたのはあのネットニュースだ。
ネットで学校自体が叩かれ、一時は、クラウドファンディングの中止も理事会で検討された。とはいえ、ニュースの元ネタを提供したのが内部の人間の仕業とは限らない。
「駅で一年が呼びかけした時に史弥(ふみや)に石を投げたのも、絶対学校の人間だ。もしかしたら……」
そう言って錦生が教室の後ろを見やる。
「錦生……無暗に人を疑うのは良くない」
「わかってるけど……」
どこか気持ちに余裕のなさを感じる。今日はこの話はやめた方がいいかもしれない。柊は思った。
「弟のことはいいよ。心配してくれてありがとう」
史弥は斗真の弟、一年の茶道部員だ。植物に詳しい二人が紅葉楼の茶庭を守ってくれている。
クラウドファンディング終盤では、一年が駅前でパネルを持って、通勤通学時間に地元の人に呼びかけを行った。
だが、誰かが投げた石で史弥が額に怪我を負い、中止せざるをえなかった。
「良くない。史弥は黙っててくれって言ったけど、俺は犯人を捕まえたかった」
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