【前回の記事を読む】茶室を守るため、クラウドファンディングで6000万円を集めた高校生。しかし、彼らが残したかった場所は市の管轄になることが決まり…

一席目 リターンは二千九百九十七服!

柊は沈黙から戻ってこない二人に重ねて言った。

「どうすれば回せるかは一年にも聞いてみるつもりだけれど、まずは二年の僕らで話し合った方がいいと思った。これは本当に単純計算の結果だし、茶室の待合を工夫して一席当たりの人数を増やせるかもしれない。冬休みをスタートにしているけれど、もっと前から始めることもできると思う……」

柊は半ば強引に話を進めてみた。頼れるのは二年しかいない。茶道部の三年は夏休み前に引退をしている上、受験は目の前だ。助けを求めるわけにもいかない。

「錦生、予約システムって、自前でできそう?」

重ねて、柊は錦生に聞いた。ファンディングに参加してくれた人へ、茶会申し込みの方法を連絡しなくてはならない。そのことを最初から気にしてくれていた錦生は、何か探してみると言ってくれていた。

もともとエースファンディングという会社を探して、クラウドファンディングのサイトを立ち上げたのも錦生だ。このメンバーの中では一番こういったことに明るい。

「無料のシステムをいくつかダウンロードしてみたけど、どれもうまくいく気がしない……かといって学園祭の時みたいに完全マニュアルなんか絶対無理だし……」

学園祭ではもともと家族やクラスメートに対して茶席の券を発行していた。だから、部員が家族や友人の分を手配している。他校からの申し込みはSNSで連絡をもらっていた。

「うまくいかないっていうのは?」

「ちょっと複雑なことをしようとすると課金になるっていうか、費用が発生するっていうか。だって俺たち、茶会の経費は計算していても、こういった経費は計算してなかっただろう……」

確かにそうだ。クラウドファンディングが成功したあとのことなど、想像する余裕はなかった。

冷静に考えられていたのは、最初にプロジェクト概要を作った時だけ。その時も、御礼茶会の経費や、高額寄付者への茶室貸与時の対応と必要経費だけで、御礼茶会運営の費用までは考えが及んでいなかった。

「錦生、言ってくれれば考えるよ。少しは余裕を持って経費計算はしてある。どれくらいかかる?」

斗真がそう言いながら、パソコンの経費のページを呼び出している。

「わからない……」

「わからないって……」

「もともとプログラムが得意で始めたわけじゃない」

「そんな無責任な言い方ないだろう」