【前回の記事を読む】鉄の品質を左右する酸素の量と鉄を取り出す時機。製鉄所の熟練職人が長年の経験で判断していたが、コンピュータが出した答えと比べてみると…
源馬宏一郎の職業人生
第1章:駆け出しの頃
HOC510は、その後中国石景山製鉄所や中国電気院に納入されました。
廉価版のHC521の開発
HOC510は、その後期待したほどは売れず、その主因は割高だったので、大幅コスト・ダウンが必要でした。そこで、同じ電子基板を流用し、6ビット・パラレル演算を4回繰り返して、24ビットの計算にする方式とし、演算部のハードウェアを1/4に減らしてコストを下げる方式で新規設計しました。
小生は、この方式をHOC521という機種の設計・調整を1年先輩の北畠さんと組んで担当しました。設計の殆どが演算部の6ビット化で、短時間で仕上げる事が出来ました。
この初号機は、三菱化成直江津アルミ電解工場に納入されました。小生は高専卒の荒井君と現地での設置・調整も行いました。
出張に出発する直前に、当時の上司の下さんに、小生のような入社2年目の若造が責任者でいいのかと不安を訴えました。
すると「君は男だろう! 金玉が付いてるだろう!」と、血も涙もないお言葉でした。
この工場は、幅20m、奥行き10m、高さ3mのアルミ電解槽の中に、ボーキサイトから不純物を除いたアルミナを炉に投入し、10万アンペアという大電流を流して、電気分解するのです。
電解槽は、U字型に配置され、長さ4・5km、幅20m、高さ10mの建屋2列で、片端は長さ80mの建屋で繋がっています。
その反対の端に巨大な別の建屋があり、中に大型のレシプロ型ガス・エンジンと、それに軸直結の巨大な発電機があります。ガスは、近場で採取される天然ガスが使用されました。
発電機の出力は、150Mwと巨大で現在の大型原子力発電所の1・5倍の出力でした。
直列に接続された300基の炉に10万アンペアを常時流します。
炉の電圧が6Vを超える炉の操業は電流路から切り離され、フォーク・リフトの先端の荷物を載せる部分に耐火煉瓦で内張した壺状のポットの内部を真空に引き、炉の底に溜まった溶けたアルミを吸い上げます。
その後、炉に原料のアルミナを補充して、再び電流を流します。
このようにして、24時間365日の連続操業を行うのです。
HOC521は、300基の炉の電圧を常時監視し、6V以上に上昇すると警報を発します。また、30分ごとにタイプライタに各炉の電圧を、ログシート印字して操業記録とします。
プロセス入出力装置は特注設計で、入力の耐地電圧が1・5kV以上必要と高圧なため、絶縁性能が2・0kVの高耐圧リレーを使用して切り替え、更にトランス絶縁しながらDC/DC変換してから、標準品のADCに接続して、電圧をディジタイズします。