【前回の記事を読む】なぜ、ある言葉には安心し、別の言葉には抵抗を感じるのか。自分でも気づかない「解釈の癖」が、日々の行動や人間関係に表れていて…

はじめに

分かっているのに、なぜ同じことを繰り返すのか

そして、カードを他者と分かち合うとき、さらに大切なことが起こります。同じ問いを見ても、人によって受け取り方が違う。同じ出来事でも、ある人は現実から見ている。ある人は本質から見ている。ある人は関係から見ている。ある人は構造から見ている。

その違いが見えたとき、対話は変わります。評価する会話から、理解する対話へ。正しさをぶつけ合う会話から、入口の違いを翻訳する対話へ。相手を変えようとする関係から、互いの心の巡りを整える関係へ。

本書は、単なる自己啓発の本ではありません。前向きに考えよう、努力すれば変われる、習慣を変えれば人生が変わる。もちろん、それらは大切です。

しかし、その前に見なければならないものがあります。なぜ、前向きに考えられないのか。なぜ、努力が続かないのか。なぜ、習慣を変えようとしても元に戻ってしまうのか。なぜ、成果を出してきた人が、人の上に立った途端に苦しむのか。なぜ、正しいことを言っているのに、人がついてこないのか。なぜ、分かっているのに、同じことを繰り返してしまうのか。

その根にあるのが、解釈です。そして、その解釈を生み出している心の巡りです。

変わるとは、まったく別人になることではありません。

変わるとは、いつもの解釈に気づき、別の解釈を選べるようになることです。変わるとは、感情に呑まれる前に、自分に問いを差し込めるようになることです。変わるとは、相手を決めつける前に、相手の入口を想像できるようになることです。変わるとは、同じ出来事の中に、これまで見えなかった意味を見つけられるようになることです。

本書では、「分かっていても変われない」理由をたどるために、解釈・感情・行動・関係という流れと現実・本質・関係・構造の四つの出入口、そして、「問い」の大切さを中心に紹介します。

外向・内向を含めた六つの出入口については、ホームページの「問いで拓く心の巡りカード」のエリアで紹介していますので、本書を読み終えたあと、さらに深めたい方は、そちらもあわせてご覧いただければと思います。

人は、分かっていても変われないことがあります。けれど、人は変われない存在ではありません。