「旅行といっても、君の顔を見たいと思って、あとは何も考えていない」
葉子は、ふふっと笑った。
「ここに二日ほど泊まって、そのあとのことは、それから考えようと」
「それでいいの」
葉子の目が、まっすぐに英介を見ていた。口元に肉感と、小ぶりの唇がある。この口元の感じを、英介はずっと覚えていた。
あの夜に見た葉子は、紅が少しばかり剥がれていて、その感じが、どうしようもなく艶めかしかった。
「あなたは、どうしていらしたの?」
「僕は、いろいろあって、いまは独り身です。あと数年で定年になるので、自分から志願して、年明けに関連企業へ出向することが決まっています。その方が、長く現役で働けますから」
英介は、淡々と説明をしながら、用なしとなった会社人間の姿をわびしく思い返した。
こんなことを、他人に話しても仕方ないと思いながら。
「会社勤めの方には、いろいろご苦労があるのね」
「平凡な人生ですよ」
「そんなこと、ありません」
葉子の目が、いたわるように英介に向けられた。
「そういう節目に、わたしに会いにきてくれたのですか?」
英介が頷くと、葉子は、細い目をさらに細めた。そうすると、葉子は笑ったような顔になる。これも、あのときと同じだった。
「奥さまは?」
「妻は出て行った」
「まあ」
葉子はそう言うと、何かを探すように、じっと英介を見つめた。相手の顔をじっと見つめるのは、彼女の癖のようだった。英介は、少しばかり、居心地の悪さを感じた。
「もう少し、飲みますか?」
葉子は、ゆっくりと頷いた。
「わたしも、お湯をいただいてこようかしら」
葉子はそう言うと、部屋の中を見回した。障子の脇に木箱があり、折りたたまれた浴衣があった。
「フロントに連絡して、連れが泊ることを伝えます。女性用の浴衣を持ってきてもらいましょう」
英介は、ゆっくりと立ち上がり、葉子の肩を抱きすくめた。首筋から甘い匂いがたち、草のような香りが混じっていた。暖房のせいか、部屋の空気は乾いていた。
葉子は何も言わない。その顔が、安堵したようになって、軽く目を閉じたとき、英介は葉子を押し倒した。
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脚フェチの彼に、いつまでも脚を撫でられた…頬ずりされ、舌を這わされると、私は痺れて動けなくなってしまい……
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