警察学校は全寮制で、入校してしばらくは外出することができない。スマホも取り上げられるので、結構この間はキツイのだが、その鬱憤を晴らしているのか郷田はいつも喧嘩腰で乱暴だ。

その腰巾着のような古尾と立場は人の支給品を隠したり課題を捨てたりして、その持ち主が教官にどやされるのを見て喜んでいる。

勿論、遺失物が見つかるまで全員で探させられるのだが、この三人は物のありかを知っているので、皆と一緒にあちこち探し回るふりをしながらにやにやしている。

そんな監禁生活も終わり、もうすぐ外出許可が出るという頃、部屋で二人きりになった時、木野が元気なく結城に話しかける。

「結城くんは実家に帰るの?」

結城は首を横に振るだけであまり多くを語らない。木野はなぜかとても言いにくそうに、

「僕は実家に帰ろうと思っているんだけど……」

そう言葉を濁す。ここにいる間は外出できるといっても、どこに行ってもいいというわけではない。自宅と親戚等、近しい者の家だけである。

しかしもうすぐ実家に帰れるというのに、なぜか木野の顔色は優れない。

「帰りたくないのですか?」

木野の顔色に気付き結城が水を向けるとううん、と木野は首を横に振ってしばらく黙っていたが、思い切ったように話し出した。

「誰にも言わないでよ。僕、郷田くんに脅されているんだ。今度実家に帰ったら十万円持って来い、でないと酷い目に遭わせるって」

それを聞いても結城は別段驚く様子もない。郷田が暴力で人から金を脅し取っているのは先刻ご承知だ。郷田が結城のところに来ないのは、柔道の教官と結城が時々道場の隅で話しているのを見ているからである。

木野は泣きそうな顔をしているが結城は何も言わない。無口なのは今もこの頃も変わらない。反応が薄い結城に木野はしゅんとして、魂が消え入りそうな溜息をついてぽつんと言う。

「かあちゃんにこんなこと言えないし、僕、どうしたらいいんだろう」

「何も……」

そう一言だけ言って結城は意味深に笑う。木野は縋るようにその顔を見たが、結城はそれきり何も言わなかった。

次回更新は10月6日(火)、7時の予定です。

 

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