【前回記事を読む】サバンナでよく見かけた、ありえないはずの光景。肉食のライオンが草食のシマウマを襲わず、平和に並んでいて…
定年後の挑戦、試行錯誤、そして〝生抜力®〟へ
2 定年後人生設計
準備その壱(20歳代、30歳代、40歳代、50歳、51歳)
・動物写真撮影
水中撮影
海水面から4m程度までは海の底の様子を見ることができるのだが、30ⅿ近くになると全く海の底が見えず、神秘的な世界となる。陸上の動物や空を飛ぶ鳥の写真は撮影したが、水中の魚の写真を撮影したくなり、スキューバダイビングのライセンスを取得した。
スキューバダイビングでは片腕で岩場に固定したとしても潮の満ち引きで引きずられたり、いったんは海の底に足を着かずに中性浮力で保つものの、タンクから肺に空気を入れた途端、中性浮力が崩れてしまい上下したり、水の中で体を支えることの難しさを実感した。
また撮影したかった被写体に興奮しすぎて呼吸が荒くなり(これはレアケースだとは思いますが?)、泡で魚を驚かせてしまったり、逆に離れて撮影しようとした時、フィンで砂がまってしまい撮影どころではなくなったりと、ダイビング技術がないと話にならないことを痛感、そこで実践を積み、ようやく、それなりの写真が撮れるようなったのは、スキューバダイビングが50本を超えたころだった。
水中という特殊な環境での撮影は、陸上で写真を撮るのとは違い、レンズと被写体の間に水があり、そのため、水中では、間に入る「水」が光を吸収することになる。水に色を吸収されると光は赤色から順番に色を失っていき、最終的には被写体も含め、青一色の世界となる。
当時の水中撮影の最終ゴールは、流氷を背景にしたクリオネの写真を撮影することであった。地球温暖化の影響を受け、流氷が北海道に接岸する期間が年々短くなり日本に流氷が接岸の機会が少なくなる可能性があるため、まだ日本に流氷があるうちに潜水撮影をしたかったのだ。
流氷の下のダイビングは、大変危険だとされている。潮の流れで流氷が移動したり、潮の満ち引きで水面の高さが変わってしまったりすることで、出入り口として開けた穴が閉ざされてしまう危険があるからである。
知床でのスキューバダイビング撮影のガイドは常時二人ついての撮影となる。ガイドは私を見守り、問題発生時に対応するために潜水しているので、問題が発生しなければ極寒の中で私を見守るのみ。30分も経過するころになると何度も上を指差し、「上がらない?」と熱心に確認してくる。
(「上がりましょう!」と誘ってきたという方が正しいかもしれませんね)私といえば撮影に夢中だったため、毎回、潜水は1時間を軽く超える状況であった。2本潜ると、血中の窒素含有量が規定値に近づくため、午前中でダイビングは終了せざるを得なくなり、午後からは、レンタカーを飛ばし、オジロワシやオオワシの地上撮影を楽しむことになった。
夕刻、地上撮影から戻った際、「今日は鳥がいなかった、今一つでした」と旅館の店主に話したら、「海も陸も撮影しているのに、贅沢なことを言ってはいけません」と窘(たしな)められるほど、当時は動物写真撮影にはまっていた。