「先生。セカンドオピニオンをさせて下さい」
「いいですよ、では書きますので、待ち合いで待ってて下さい」
受付に呼ばれ、手紙とプレパラートと、MR画像の入った大きな袋を渡された。澄世はネットで調べて、横浜の方のS病院のB先生が、女医で婦人科医として有名な事を知り、横浜まで行った。ショートカットの髪で、インテリっぽいB先生は、手紙を読み、資料を診て言った。
「あなた、志願したんだから切りなさい!」
その一言だった。
帰りの新幹線の中で、澄世は怒りと悲しみでいっぱいだった。志願したですって!? なんて言いざまなの! 酷すぎる! 誰よりも手厳しかったB先生の言葉に、澄世は大きなショックを受けた。そして、決意した。もう二度と婦人科へは行かない!と。
乳癌が助かったと思ったら、子宮癌だなんて! 結局、私は死ぬんだわ! いいわ! 人はどうせいつか死ぬのよ! 早いか遅いかだけだわ! 死ぬ日まで生ききればいいのよ! 恐ろしい覚悟だった。
両親と兄は、澄世の決心に賛同しなかった。母は言った。
「命が大事だから、切ってちょうだい」
澄世はもう何も言いたくなかった。親戚の叔父がマンションを経営している事を思いだし、借りられる部屋はないかと相談をした。叔父は、江坂に新しい賃貸のマンションを建てたところだと言い、案内してくれた。
七階建てのこぢんまりした綺麗なワンルームマンションで、江坂の駅に五分と近く、地下鉄の御堂筋線一本で大阪へ出られた。オートロックでセキュリティもしっかりしているので、そこに決めた。
澄世は高いところは苦手なので、一番下の階、二階の部屋を借りる事にした。家出の理由は聞かれなかった。三月に、澄世は貯金をおろし、ベッドと冷蔵庫と電子レンジを買い、あっという間に引っ越してしまった。
テレビも新聞も欲しくなかった。全てから逃避して独りになりたかった。
そうして、小さな台所で、体にいいものを研究して、朝はリンゴとニンジンを擦って食べた。体を温める為に、毎日、半身浴もした。けれど、何を見ても、何をしても空しかった。月日の感覚がわからなくなった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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