そんな私も脱帽のT氏とある日、お酒を飲みながらいろいろとお話をしている時に、

「祖国には昆虫の研究者があまりいないんだよ。君のような人がここで研究してくれたらどれほど嬉しいか。みんな手を叩いて大歓迎だよ」とおっしゃった時には、目頭が熱くなってしまいました。

昆虫の研究に携わる人がよく、「そんなのを研究して何に役立つの?」と言われる中で、まだまだ未熟な私をこんなにも温かく迎え入れてくれたことに大変感動したのです。

(昆虫の研究でも役に立てることがある!)

そう確信を得た瞬間でした。気持ちのガソリンも満タンになった私ですが、調査日はあいにくの雨。

こんな頼もしいT氏でさえ、激しく降る雨を見ながら、「いや〜、これは参った。雨で糞は流されているだろうし、足跡もないだろうな〜……」という落胆の声を漏らすほど調査の条件は最悪でした。

カワウソは川から少し頭を出した岩の上で決まって糞をするようなのですが、水が増した川ではその岩が浸かるために糞の発見は難しく、また足跡に関してはその痕跡自体が雨によって洗い流されるために極めて絶望的な状況でした。

しかし、せっかくここまで来ましたし、ましてや私は日本から来たのです! 旅館でじっとこの状況を恨んでいても仕方ありません。

ずぶ濡れ覚悟で調査へ出発!

数年前にT氏が糞を発見したというその場所へ向かうことにしました(写真10)。

写真10 T氏とカワウソの巣を調査