その日は、朝方少し強い雨が降って、それからだんだん日が射(さ)してきて、学校から帰る頃にはかんかん照りのいい天気になっていた。
そうだ。確か、参観日だった。お母さんは懇談会(こんだんかい)があって遅くなるから、家に帰ってもだれもいない。
みっちゃんは、いつもよりゆっくり歩いた。ひょっとしたら、後から来るお母さんが追いついてくるかも知れないって思ったんだ。
きっと懇談会って長くかかるから、どうせ、みっちゃんの方が早く家に着くに決まってるけど、家の外でお母さんとばったり会うって、なんかいいじゃない。
ちょっと新鮮な感じ? いつものお母さんと少し違ってお化粧もしてるし、歩き方もスッスッとしているし。
急に外で会うと、はじめは「だれ?」って思うよね。もちろん一瞬(いっしゅん)だよ、一瞬。
だって自分のお母さんだもの。わからないはずはないでしょ。でも、お母さんがそこにいるなんて思わないから、一瞬「だれ?」って思うの。
それから懐(なつ)かしい匂いを感じて、笑顔が優しそうだなって思って、なんだかとても大事な人のような気がして。
それで「なんだ。お母さんだ」ってわかったとき、うれしいような照(て)れくさいような、とても素敵(すてき)な気分になるんだ。
だからみっちゃんは、ひどくゆっくり歩いた。
同じ方向に帰る友だちは二人いて、チョメ男とマズ。
チョメ男は本当は向井富男(むかいとみお)っていうんだけど、なんかみんながチョメ男って呼んでいた。
チョメチョメと動き回ってひょうきんだから、トミオが訛(なま)ってチョメオだ。
マズの本名は、松木久利(まつきひさとし)。
話すときにいつも、偉そうに「まず……」って言うのが口癖(くちぐせ)で、それがあだ名になった。
チョメ男はみっちゃんと同じで、勉強は得意な方じゃない。まあまあかな。
で、今日の参観日、一度も活躍できなかった。