■「祖国」で、採集活動をする決意
到着してから数日間で、日本とは違うさまざまな経験から教訓を得た私でしたが、これから採集をするにあたっての現実を強く突きつけられました。
担当の案内員に、これまでの経験から私がリストアップした採集候補地を伝えたのですが、検討の結果、観光地に指定された区域以外は採集許可を得ることができませんでした。
(日本からやっと来ても、これが現実か……)
案内員に告げられた時は、正直に自身のこれからの研究の行方に対する不安を拭い去ることができませんでした。しかし、案内員の申し訳なさそうな、それでいて当然でもあると言わんばかりの揺るぎない眼差しを見て、私は自身がどれだけ稚拙で浅はかなお願いをしてしまったのかと大きく後悔しました。
上述しましたが、ここでは未だ朝鮮戦争は終わっていないのです。半世紀以上が過ぎた今も「休戦状態」にあり、未だ私の祖国はその戦いを世代を継いで行っていて、明確な言葉で説明されたわけではありませんが、大変複雑な事情があるのです。
滞在期間中、私はより良い自然環境で昆虫の採集と調査を行いたいという気持ちと、このような現実からくる断念の積み重ねで、多くの葛藤の連続でした。
しかし、これが朝鮮の今の実状であることを学び、その状況を現地の方と共有し正確に理解することによって、「祖国」と呼称する私自身が日本の地で何を知り、何を学び、何を感じて「祖国」と呼んでいたのかを深く省みることができました。
この現実こそが他人のものではなく、また他の国のものではない私の国の、私自身のものでもあるのだと感じることができた時、やっと祖国に腰を据えて研究を行うという決意が湧いてきました。
日本で生まれ育った私ができること、すべきことは果たして何なのか。
ここでの採集はただ虫を採るだけではなく、その答えの欠片を探し集め続ける過程でした。
しかし、すべてのエリアが「採集禁止」ではないので、くよくよ悩むよりも体を動かすことが一番!
できる場所があるかぎりどこへでも「昆虫採集、するっきゃない!」って感じでした。
虫はどこにでもいますからね!