【前回記事を読む】彼氏にフラれて電車で泣いていると、女性がハンカチを渡しながら声をかけてくれた。実はこの女性、同じ大学だったようで…

『未来行万博開催中』

第1章 利佳

万博会場へは、利佳の自宅がある大阪市内中心部から地下鉄に乗って、一本で行くことができた。利佳がホームで電車を待っていると、まるで宇宙船を思わせるような、近未来的な形をした電車がやってきた。電車の中は、会場に向かう人たちで混雑していたが、電車は途中から高架に上がったので、大阪のベイサイドの景色を見わたせた。

乗客たちの中には、なぜか、利佳の方を向いては、くすくすと笑う人がいた。

自分の顔に何かついているのかと、鞄の中からコンパクトミラーを取り出して、自分の顔を確かめてみたが、そこに映ったのはいつもの見慣れた顔。気になることと言えば、昨日大学のレポートを仕上げるのに遅くまでかかってしまい、目の下にくまができていることぐらいだろうか。「変なの……」利佳は、自分を納得させるように、心の中で呟いた。

「うわぁ、ママ、大きな橋があるよ」

隣に座っていた子供が、後ろを振り向きながら、歓声を上げた。

「こらっ、いっちゃん、靴のまま座席に上がったらだめでしょ」

まわりの目を気にしながら、すかさず注意するその子の母親。

子供はみんな、どこかに出かけるとなると、気分が高まるものだ。利佳は、そんな親子の姿を見ていて、ほのぼのした気持ちになっていた。

電車のアナウンスは、大阪港駅に到着することを伝えていた。車窓から、ひと際大きな観覧車が見えた。利佳は、ふと懐かしくなって、目をつむった。あの観覧車に乗ったのは、いつのことだっただろうか。