次の週の半ば、さっそくショウ君と家の近くのパーキングで待ち合わせた。

先に到着した私は車を停めて、外でショウ君が来るのを待った。冷たい風が、下着を着けていない下半身を凍えさせる。通行人が、ジロジロと訝しげにこちらを見ながら通り過ぎた。咄嗟に私は顔を背ける。

既婚者でありながら、木枯らしの吹くなか下着も着けずにじっと男を待っているのだと見透かされているような気持ちになる。下着を着けなかったのは、ショウ君へのちょっとしたサプライズだった。

手鏡を何度も見た。髪型は、メークは大丈夫だろうか。ショウ君が来るのを今か今かと待ちわびた。高揚感で顔が火照る。そのうち目の前にシルバーのセダンが停まった。中を窺いながら、助手席に乗り込む。

「待たせてごめんね。いや、可愛い! 今日も可愛いね、本当に」

ショウ君は車を走らせた。ふと後部座席を見ると、仕事の資料と思わしき書類が無造作に置かれていた。

「ごめんね、散らかっててさ。俺結構こういうところ、テキトーなのよ」

私の視線に気づいたショウ君が言った。首を横に振って彼を見た。いや、このくらい大雑把なくらいが丁度良いのかもしれない。旦那といると、いつも息が詰まりそうだ。

長所と短所は紙一重だとはよく言ったものだ。綺麗好きなのは、旦那の長所に違いない。しかし、そんな長所さえも、私にとっては短所だった。私を責めるような掃除機の音を思い出す。ショウ君は大らかなのだろう。彼と一緒になれたら、どんなに良いだろう。運転している彼の横顔を見て私は久しぶりの感覚に陶酔していた。

恋。もう誰にも止められない。いつから好きになったのかも分からない。何に惹かれているのかも分からない。とにかく好きで好きで仕方がない。自分を取り囲む世界が一斉に輝き出す。当たり前のような日常にも、光が満ち溢れるのだ。

そして、好きな人を見つめている時。この上ない至福の時間だ。圧倒的な充実感で自分が空腹だということもすっかり忘れていた。ショウ君の言う美味しいお店とは一体どこなのだろう。胸をときめかせながら助手席で揺られた。しかし気がつくと私は、ラブホテルにいた。