第1章 思いもよらない事態
その5 骨髄移植へ向けた準備
─天は自ら助ける者を助ける─
夏に始まった私の闘病生活も10月初めには白血病治療の第二段階(地固め療法)も4週目が終わり、「休薬期間」に入るタイミングで一時退院の許可が出て、10月7日から約10日間、自宅で療養することになりました。
前回の自宅療養では、落ち込んだ体重をなんとかしようと思って肉ばかり食べていたのでコレステロールと中性脂肪の値が高くなり、その結果として「食事制限」が継続してしまいました。
そこで、今回は「食事を改善しよう」と思い、自分で和食をつくってみようと考えました。本屋さんで市瀬悦子著『基本のきちんと和食』(主婦の友社)という本を買ってきてのチャレンジです。
サンマの塩焼き・ブリの照り焼き・筑前煮・カレイの煮付け・牛肉とごぼうのしぐれ煮・大根のそぼろあん・切り干し大根の煮物・小松菜と油揚げの煮浸し・おでん。
レパートリーが少しずつ増えていきました。本の通りにつくっても、なかなかうまくいかないときもありますが、意外とおいしくできてしかもヘルシーなので、これからも和食をつくっていきたいと思っています。
ただ、男の手料理は時間がかかりすぎる。これをなんとかしなくては!
さて、充実したリフレッシュ期間も終わり、10月20日から私の白血病治療の第三段階(地固め療法C1)に入りました。
再入院してカテーテル(首の静脈に直接管を入れる)の挿入や血液検査・尿検査などを行い、いよいよ第三段階の治療が始まりました。
順調にいけば、この治療は造血幹細胞の移植までの最後の投薬治療になります。
今回の治療もやや強めの抗がん剤の治療になりますが、第二段階と異なるところは使う薬剤と、主に点滴による投薬になるところでした。
つまり、点滴の管が24時間つながっているので、運動や移動が制限されます。また、薬剤が長く体内にとどまることを避けるために、大量の水と「利尿剤」をカテーテルから入れている関係で、1時間半から2時間おきにトイレに行かなくてはならず、これも困ったものでした。もちろん夜中もです。
さらに、抗がん剤による胃の粘膜への攻撃を抑制する薬剤で今までになかった副作用が出ていました。手足や顔に赤い斑点が出て、少しかゆみがあるのです。医師からは、「かゆみ止め」の塗り薬が処方されて、我慢できないほどではないので薬を塗りながらなんとかしのいでいました。
一方で、「造血幹細胞移植」について嬉しい報告がありました。私の白血球の型(HLA)と完全に一致するドナー(提供者)が見つかったのです。
といっても、ドナーは私の姉でした。しかし、兄弟姉妹の白血球の型が一致する確率は25%(4分の1)。私には姉が一人しかいないので、一致するかどうか心配でしたが、一致することがわかって本当に良かったです。
このまま、治療が順調に進めば、最短の時間で移植まで進むことになります。