【前回の記事を読む】朝、目が覚めても行く場所がない……「このまま終わっていくのだろうか」定年後、人知れず深まる孤独の正体とは
はじめに――心の炎を絶やさないために
思想家・作家のナシーム・ニコラス・タレブは、『ブラック・スワン』1の中で、「あなたが今存在していること自体が、確率的に奇跡だ」と述べている。
私たちが生きていられる時間は、想像以上に貴重である。何かをしてもしなくても、人生はいずれ終わる。そしてその終わりは、思っているよりずっと近いかもしれない。
だからこそ、どのような状況にあっても、情熱をもって「自分がやりたい」と思うことに取り組む意味がある。心の炎を、人生の最後の瞬間まで燃やし続けていきたい。
本書は、定年退職を迎える人、すでに定年退職を経験した人に向けて、退職後の人生をどのように生きるかを考えるための一冊である。
しかし同時に、定年退職がまだ先にある二〇代、三〇代の人にも、ぜひ手に取ってほしいと考えている。
私がボーヴォワールの『老い』2を読んだのは、会社を辞め、将来について考え始めた二〇代後半の頃だった。その読書体験は、「自分はどう生きるべきか」を深く問い直すきっかけとなった。
本書の根底にあるのは、突き詰めれば、「人はなぜ生きるのか」という問いである。日々の生活に追われ、立ち止まって人生を考える余裕を持ちにくい若い世代にとっても、本書は「人生とは何か」を考えるための一つの契機になるはずである。