【前回の記事を読む】小さいころから心に棲みつく“ユメジ”――夢の中で会うたび、おれの日常を知っていた
ユメジ
「あいつがどうかしたのか?」
おれが浩介に聞いた。浩介は意味深な含み笑いを浮かべた。
「あいつ、昨日の午後練も通学路のフェンスから見てた。その前の日もそのまた前の日もずっとだ」
「バカバカしい、自意識過剰じゃね? ひょっとしたら隣でサッカーやっている連中の誰かかもしれないじゃん?」
「一昨日は小雨だった。野球部以外の部活はやっていなかったけど、いた」
確かに、一昨日は小雨で、殆どの外の部活の連中が退散する中、おれたち野球部は監督の無理強いの中練習した。そのせいで風邪をひいたから、しつこく憶えている。しかし、そんな女子なんて、気づきもしなかった。
「は? だから何が言いたいの?」
おれがそう言うと、浩介が吹き出した。
「にっぶいな、お前は。お前に気があるってことじゃないの?」
「見ているだけで気があるなんて判断するなよ、浩介。もしかしたら勘違いかもしれないし。ひょっとしたらおれに恨みをもっているのかも」
浩介が何を言い出すかと思ったら、吹き出したいのはこっちのほうだ。
「じゃあ、お前今日の午後練の時確かめてみれば?」
そう浩介が言い残してキャッチボールの距離を取るために走っていった。
おれは窓をもう一度見たが、誰もいなかった。そこで一つくしゃみをした。
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