「……ユメジか」
どうやら眠りに落ちたらしい。夢の中でおれの実体は見ることはできないけど、そのもやの場所にユメジと一緒に居ることは確かだ。ただ、毎晩の様にユメジと交信しているわけではない。じゃないとこちらの身体がもたない。
「今日はやけに張り切ってたな、トシキ」
ユメジはそう言って、こげ茶のかかった二重瞼の目を細めた。がさつで意地汚い野郎共のいるおれの世代より四・五歳は上なのに少年のような澄んだ笑顔を浮かべる。ホントにコイツに嘘はつけねぇな。
「……笑うなよ? おれのことずっと見ている女子がいるんだよ」
おれはそう言うと、耳まで赤くなっていた。なんでこんなつまらないことにいちいち赤くなるんだろう?
「……知ってる」
「でも、同じ学年でも全然知らない女子だ。しゃべったこともない。浩介も知らないと言ってたし」
昼間の状況から考えると、おれか浩介かってことになるけれど、浩介では無い様に願った。
「ジイシキカジョウかもな。考えるだけ無駄かもしれないし」
「トシキ」
ちょっとどころか全然心残りだったけれど、気にするユメジをよそにおれはこの話をやめた。そしてなるべく勘違いだと自分に否定をかけた。ところが、次の日に事件が起こった。
今日は久しぶりに部活がオフだと言われた。部活がないと午後の解放感が違う。おれは持て余した午後を有効に利用しようと、あるはずのない羽を伸ばすような気持ちで教室を出た。
すると、クラスの外で誰か待っている奴がいる。おれは「えっ?」と声を上げそうになった。あいつだ。名前がわからないので、グラウンドを見ていた女子としか言いようがないけれど。何も見なかった様に前を通り過ぎようとした、その時だ。
「あの、内藤君」
その一言でおれは出来損ないのブリキ人形みたいに動きを止めた。一応「おれ?」と一見冷静を装って後ろを振り向く。そうするとこちらへ歩み寄ってきた。
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