はじめに
“見えないものが見える”とは、決して幻視(げんし)ではありません。
幻視とは実際には存在しないものが視覚的に見えてしまう現象です。
認知症、神経疾患や薬物などによって起こります。本書では“見えないものが見えるとき”は、普段気がつきにくいことや見えにくいことが、周囲の条件・状態やそれ自身の変化で見えるようになったときです。
存在を示すサインが灯ったとき、とも言えます。しかし、そのサインは簡単には気づきません。
青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
散ってすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
(『金子みすゞ名詩集』)
これは、金子みすゞの「星とたんぽぽ」という詩です。
昼の星とたんぽぽの根について詩っています。
これを読むと“見えないものが見える”ということが少しわかってもらえるかもしれません。