オランダの壺
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「最初、どこからかしら」
最近すっかり見なくなった丸目四灯のGT車の後部座席に乗った年配の客が聞いた。のんびりした口調だ。
麻田大輔(あさだだいすけ)は明治通りへ左折しながら、
「表参道です。そのあと、南青山、広尾の順に見ましょう」
五月の風は爽やかだが車内は暑い。体格のよい麻田は額の汗を拭い、
「ありがたいです」ルームミラーで客を覗いて言った。
「どうして」
「それは」麻田は助手席に置いた名刺をチラ見し、
「赤道(あかみち)さんみたいなお客様じゃないと、そんな高級マンション、ご案内できないですから」
名刺の文字はゴールドだ。“株式会社グリーン・イクエイター代表赤道緑(あかみちみどり)”とある。麻田の英語力でも「イクエイター」が赤道(せきどう)であることはわかった。この人はその長い人生でさんざん“セキドウ”と呼ばれてきたのだろう。しかし、そう呼ばれたとしても、かっこいい苗字だ。
七十は過ぎていると思うが、背筋はすらりと伸び、身長もある。目も口も大きく、日本人離れした顔立ちだ。