長谷川には大学時代の友人が、大阪府警本部刑事部捜査第一課にいた。二人とも剣道部で一、二を争うライバルだった。元町宝石店襲撃事件で重傷を負った時、大変心配をかけご丁寧なお見舞いを頂いていた。
だが、通り一遍なお礼しかしていなかったので、お礼の電話を掛けたついでに捜査状況を聞いてみた。友人は、「これは外部には秘密だが」と釘を刺した上で、新聞などのメディアには未公開の情報を教えてくれた。
それによると、事件が起こった同時刻に、堂島公園付近の複数の防犯カメラに、百七十センチぐらいのスーツ姿の男が、雨の深夜にもかかわらず強烈な街灯の明かりに照らされて鮮明に映っていた。堂島公園の防犯カメラには、浮浪者がバラバラになる前後、そのスーツ姿の男が暫くの間じっと浮浪者を見つめている様子が映っていた。
しかし、その男が浮浪者に直接手を触れていないのは明らかだった。近くの道路の防犯カメラには、笑っているのであろうか、体を揺すりながら、透明の安物の傘を差して堂島通り方面に歩いていく男の姿が映っていた。
大阪府警の捜査本部は、この防犯カメラの情報をもとに、北の新地とタクシー会社を中心に聞き込みをしている最中だという。ただ、その男の身元が割れたとしても、直接男が手を下していないのは防犯カメラの映像から明らかで、これだけだとその男の追及は難しいと判断していた。
死因であるが、バラバラになった死体付近から火薬や爆薬残渣が検出されておらず、大型口径の銃器や爆発物による他殺の可能性は少ないという。死因不明のまま、捜査本部は縮小せざるを得ないというのが、友人の見解だった。
長谷川の妻美幸は正直戸惑っていた。