それはそうだ。なにしろ自分がエンジニアだなんて、今はじめて聞いた。私自身が知らないのだから、他人が知っているはずがない。

ただ一つ、想像できることならある。先程クローゼットの中で私が見つけた二段重ねの機械──あれこそ“あなたは外部にいる特定の人物と連絡を取ることができます”と関連があるはずだ。

道具は用意したから、新米のエンジニアとして働きなさいと背中を押された状況に違いあるまい。

ドアの脇に不思議な絵が貼られているのを見つけた。

「ピクトグラム?」

九つの絵が縦三個、横三個に描かれている。

包丁みたいな絵もあれば、飛行機みたいな絵もある。なぜか枕みたいな絵だけが2ヶ所に描かれている。そしてなによりも中央のしゃれこうべが不気味でならない。

「これはなに?」

勿論、私の疑問に誰も答えてくれない。と言いながらこれもなんとなく想像がつく。なぜならピクトグラムの上に“JOB”とタイトルのようなものがついているからだ。職業を意味し、この中の一つがエンジニアを表していると考えられる。左下の歯車みたいな絵がそれっぽい。

ひとまず外へ出てみたい。むしろ出なければならない。

ところが、ドアにはノブがない。自動で開閉するタイプのドアと見られる。

「おい? どうやって出ればいいの?」

コンビニの自動ドアのようにタッチすれば開くみたいな仕組みかと思い、試しにドアを軽く触れてみたものの、開く様子はない。

ドアの脇の壁にスイッチみたいな形状の四角いものを見つけた。

「あ、これ?」

言いながら押してみる。

──本人確認を行います。

天井からAIみたいな音声が流れてきた。

正面を向けばいいと勝手に解釈して、私は直立姿勢を維持した。

果たして数秒後にドアは開いた。

ドアが開くと、ドアの向こう側にはまたドアがあった。

「どうして?」

最新鋭の二重扉と理解するまでに時間は掛からない。ドアとドアとの間に人が辛うじて入れる狭い空間が用意されている。

片側のドアを開けるためにはもう片側のドアが閉まっていなければならない。同時に複数名の人物がドアの内外を行き来できないよう制御されている。

なぜそこまで厳重に管理されているのか、私にはわからない。私にわかるのは、この部屋には本人しか入室できないようだ─ということくらいだ。

もう一つのドアをも開けて、晴れて外へ出られた。

外と言っても部屋の外というだけで、とある建物の中らしい。通路が左右に延びている。

淡いグレーの壁が延々と続く飾り気のない通路で、無機質な印象を抱いた。当然、この景色を目にするのははじめてだ。

「ここはいったいどこなのか? わからないものはわからない」

独り言がやまない。そうでもしないと、不安で押し潰されてしまいそうだ。

振り返ると、今まで私のいた部屋のドアがすでに閉まっている。ドアにはネームプレートが刻まれていた。

「KOTONE」

私の名前だ。なぜか横文字だし、なぜか下の名前だった。でも細かいことを気にしても先に進めない。

 

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大地震後に運ばれた建物で、初めて出会った少女は私を見るなり…「私に構わないで!」まるで化け物に遭ったような目で……

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