翌朝、いつもより早く目が覚めた僕はベッドの中でお祈りをした。
神様、お願いです。Lisaがまた僕の所に戻ってきてくれますように。
いつもと同じように支度をして学校へ行ったが、その日のことは何一つ覚えていない。今日がLisaに会える最後の日。泣きながら歩いた学校の帰り道。
悲しいって、転んで膝をすりむいたときと違う涙が出るんだ。
初めて味わう別れの悲しさ。家に帰り、お昼を食べてから早々に家を出る。
「時間にはちゃんと家に帰って来るのよ。分かってるわね、Marlon」
ママ……。
今まではとっても楽しかった通い慣れた道。早くLisaに会いたい。でもなぜか足が思うように速く歩いてくれない。無意識に公園に入ると、風が僕の髪と草むらを優しく撫でてゆく。
思わず無造作に草を掴み、むしり取って投げると草は風に飛ばされ散り散りになった。飛ばされた草の先には、あの肉屋の太っちょおばさんが心配そうに立っていた。
「Marlon、どうしたの? 今日はなんだか寂しそうだね。ママに叱られたのかい?」
「違うの、おばさん。Lisaがね……、もう会えないの……。ねえ、日本ってどこにあるの?」
肉屋の太っちょおばさんは悲しげに頷いた。
「ずーっと遠い所にあるんだよ。私も行ったことはないけど、きっと素敵な国だよ。『アルプスの少女ハイジ』って読んだことはあるかい? クララのお父さんが仕事で日本へ行って、お土産に日本人形をプレゼントするの。Lisaのようにとってもかわいいキモノを着たお人形をね。そうだ、思い出した。教会の近くのホテルにも飾ってあるから見てみるといいよ」
そう言いながら僕の頭を優しく撫でてくれた。
すると、ほんの少し、気持ちが和らいだ気がした。太っちょおばさんにさよならを言い、僕は思い出した。
そうだ、僕は今日、Lisaにサヨナラを言いに行くんだ。早く行かなくちゃ。Lisaが僕を待ってる。