【34日目/晴】

早朝に船団はカルタヘナの港を離れマッサリアを目指す。

そこはフランク王の異母弟が治める要衝の地だ。サラセンからの幾度とない攻撃に耐えてきた要塞都市なのだ。

地中海に面したフランクの海岸やイタリアの海岸の村々はシチリアやサルディーニアや遠くアフリカからやってくるサラセンの海賊に度々襲われている。

海賊は波のように押し寄せて財貨や人々を奪い、波のように去っていく。地元の領主の兵が救援に駆けつけた後には死体の他に何一つ残されていない。その繰り返しだ。

今のところフランク王の異母弟もマッサリアに籠(こも)って守勢一方という状態らしい。

【39日目/曇】

運悪く風が味方しなかったのでマッサリアへの航海は主に櫂を使った。それでも翌日の午後には港に入ることができた。

ここではバイキング船は好奇の対象のようだ。港はフランクの兵や見物の者であふれている。

石弓で重武装した小隊とともに土地の役人が桟橋にやってきた。船長と通訳が桟橋に降りていく。何の問題も起きることなく役人と兵士の集団は帰っていった。サラセンの通行証が敵対するこの国でも神通力を発揮したようだ。

大人が言うには船団の富は故郷を離れた時の優に20倍を超えているそうだ。この要塞都市を離れる時が来た。再び船団は沖に出て沿岸に沿って東に進路をとる。

もうこの辺りはイタリアだ。海岸のここかしこに石の塔が見える。

それらは灯台ではない。サラセンの海賊の襲来をいち早く発見するための見張り台なのだ。この地は東ローマ帝国とフランクの両方の力が及ばない権力の真空地帯だ。

住民はそれぞれの土地に割拠する弱小な領主のあてにならない庇護をたより、彼らの収奪と横暴に耐えている。領主たちはサラセンの海賊とみるや城に閉じこもり民を守ろうとしない。

この疲弊した土地のどの港にも寄ることなく船団はイタリア半島を海岸線に沿って南下した。