【前回の記事を読む】教育熱心な父親に反論すると「贅沢いうな!」と殴られる…家で覚えた言葉は「面従腹背」、だが学校ではそれが思わぬ武器となり……

私が空を飛ぶ理由~つばめのつばさ~

社会の先生になりたいな

中学では学科ごとの担任がやってくる。全員とは言わないが、私は多くの先生から特別扱いを受けていると感じていた。

あるとき社会のテストが返されて、先生から一番は百点満点だったことと私一人の名前が告げられた。「てる」は私のところに来なかった。廊下側の逆光の中に、机のテスト用紙を前にうつむいたままの彼女の姿があった。

先生は順に答え合わせと解説を始めた。私は自分が書いた答えの中にまちがいを見つけた。横にはサインペンの赤い大きな丸があるが、明らかにまちがっていた。

答え合わせが終わると、鼻毛の飛び出した鼻をこすりながら先生が言った。

「もし、合うとるのにバツになってるのがあったら、言うてこいや」

教室内は近くの人と見せ合って意見交換をする声でざわざわしていた。

私は椅子をガタッと引いて、テスト用紙を片手にずんずんと前に向かった。満点なのに何ごとかという周囲の視線を感じる。

教壇にいた先生と目が合う。私は近づいていくと、まちがっているのにまるになっている箇所を説明した。不意を突く登場に驚きながらも、彼は小声で「いや合うとる、合うとる」を繰り返す。私の説明など一切耳に入っていないようだ。私はもう一度説明する。

すると彼は困惑したように「ええの、ええの、おまけだから」「もう付けちゃったし」と言って、こちらを見てにやりと笑った。まさかの反応にちゅうちょしたが、私は「まちがってます。点数を引いてください」と懇願した。

頑として引かない態度に、「変わったやつやな」とこぼしなっがら彼は渋々、愛用する赤ペンのキャップを抜いた。指摘した箇所と百点をそれぞれに斜め線で消して、点数を書き直した。