芸能界の話になると、彼女の口数がわずかに減った。

減るが、止まらない。止まらないのは、話したいからだ。プロデューサーやベテランといった上からの圧力と、後輩など下からの突き上げに板挟みになっている。だからと言って縋りつける相手も満足にいない。話すことができない。

そんな境遇は中堅どころの中間管理職とどこか似ている。上が上司に、下が部下になっただけだ。だが亀島は社会経験もまともにない、弱冠23歳だ。普通の人と経験するライフステージが20年早い。

売れかけた人間というのは特殊な孤独の中にいる。完全に無名でもなく、完全に有名でもない中途半端な位置にいると、本音を言える場所がみるみる失われる。はたから見たら順風満帆に見えるかもしれないが、その実、その順風満帆は孤独と表裏一体なのだ。

無名の時は言えた不満が言えなくなる。言ってしまったら、調子に乗っていると業界関係者の反感を買うから。仕事を失うことにつながるから。

愚痴のはけ口がどんどん塞がれていく。愚痴を吐いてしまえば、重箱の隅を楊枝でほじくるのだけが得意なネットの住民に集中砲火される。

周りが仕事相手になっていく。純粋な友達は自分を気遣って遠慮し、どうでもいいやつばかりが自分のテリトリーにずけずけと入ってくる。友達の定義が揺らいでいく。

私はその孤独を見ていた。

正確には、孤独に乗じた、というべきか。彼女が話したがっていることを察知して、聞く態勢を作った。ホステスで培った技術の応用だ。本郷相手にやったことと構造は同じだ。ただ本郷相手よりずっと、聞くことが苦ではなかった。これは認める。

次回更新は8月19日(水)、16時の予定です。

 

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