俳句・短歌 句集 母娘 2020.10.12 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第21回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 走る走る海亀の子は母知らぬ 私に足らぬ男とカルシウム 我が恋はペンキ塗り立て寒桜
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『SHINJUKU DELETE』 【第9回】 華嶌 華 親の後の風呂に抵抗があった。親の裸も見たくなかった。「家族だから大丈夫なのが当たり前」? 他人のほうがマシだった。 化粧なんかしなくても、どうしてこうも美しいのだ。自分の可愛さを理解している。そして、可愛いことを、正義とも罪とも思わない純朴さがある。喜美子は、いたたまれない気持ちになって、さっとリビングを出て自室に戻り、着替えを片手にバスルームへ向かった。これからは電動歯ブラシのスタンドを見れば少女を思い出す。彼女が咥える歯ブラシには、喜美子の唾液の微粒子が付着している。申し訳ない気持ちがたたり、喜美子は翌朝…