ホステスの仕事を始めたのは、大学1年の秋だった。

酒が飲めない未成年でも、顔がよっぽど良くて、コミュニケーションが最低限できれば、この世界に飛び込める。求職活動をして初めて知った。

ルッキズムもルッキズムだが、私はここにおいて強者側だから文句はない。弱者の嘆きは弱者にしか似合わない。

体験入店は3軒やった。

1軒目はナイトクラブと言うには庶民的すぎた。最初の5分で切った。客層が違う。価格帯が違う。雰囲気が違う。私は愛情障害を拗らせて誰かと話したいわけでホステスになるんじゃない。そんな寂しい動機で夜の世界に入る人間と一緒にしないでほしい。

2軒目は惜しかった。内装は高級だったが、客の質が追いついていなかった。成り上がった中小企業の社長が多い。歯に衣着せずに言えば、しょうもない下品な金持ちだ。資産はある。でも人脈の種類が違う。安っぽい金の匂いがした。私が欲しいのは金じゃない。

3軒目で決めた。

立地は高級繁華街の外れ。マップにすら載っていない隠れ家的な落ち着いた店。最低でも客単価3万円以上は見込める。立地と価格帯と内装の組み合わせから、来るべき客層は読めた。

実際に体験入店した夜、読み通りだった。隣のテーブルに座った男が「来週の収録が」と言った瞬間、私の計算は1つ確認された。そこに決めた。

私がホステスになる理由。それは芸能界に根を張る人間とコネクションを作って、芸能界に入り込むためだ。コネクションと言えば聞こえはいいが、正確に言えば、相手の弱みを握ること。中学・高校時代と全く同じだ。人間の根本はそう変わらないし、社会の構造もそう変わらない。

私は正攻法の対極にいる女だ。相手の脆弱性を突いて、蹴落として、相対的に順位を上げる。狡い手で上り詰めようとする捻くれた女だ。もう受け入れてもらうしかない。

ホステスの仕事は、思ったより複雑だった。単純に話を聞いてお酒を注ぐだけじゃない。記憶力がいる。感情のマネジメントがいる。疲れていても機嫌が悪くても、客の前ではそれを出さない。1番大事なのは、相手に「自分だけを見てくれている」という錯覚を与えることだ。

これは中学から磨いてきた技術と完全に一致した。

次回更新は8月8日(土)、16時の予定です。

 

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