【前回の記事を読む】愛犬がソファの陰に隠れていた…様子を見守っていると、後ろ脚をぴーんと立てて、前脚を縮め、「ウーッ、ウーン」と苦しそうに…
ぼくらのアム
ママが帰ってくるまでの間、ぼくらは口をきかなかった。だいたい全然しゃべる気にならない。ごはんもおいしくない。歯を磨いて、顔を洗って、服を着替えても、勉強なんてできるわけがない。
「勉強しましょう〜」
と、突然(とつぜん)ショウキが、ママの真似をして言った。
「うるさい!」
と、言ってはみたが、いつものようにけんかする気にもならない。
そのとき、チャイコフスキーの花のワルツが鳴り出した。電話だ。
「もしもし」
「タイキか? ママは?」
パパからだった。ぼくは、あわてて、これこれしかじかと、アムが大変なことを説明(せつめい)した。
「そうか。大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
と、答えたが、本当は何が大丈夫なのか、良くわからない。
しばらくして、また電話が鳴った。今度は同級生のケッケから
だった。ぼくはケッケが大好きだ。いつも一緒に遊んでいる。
「遊べる?」
「ごめん。無理」
電話を切ってから、もう少し愛想(あいそ)良くすれば良かった、と後悔(こうかい)した。が、後の祭(まつ)りだ。今度会ったらあやまろう。っと、思ったらまた電話。今度はオッカーからだ。ぼくは、少し丁寧(ていねい)に状況(じょうきょう)を説明して、断(ことわ)った。オッカーも大切な友達だからね。
どれぐらい待ったんだろう。ショウキは、隣で寝てしまった。突然、ガレージで車を停める音がして、ママが帰ってきた。アムはいない。
「アムは?」
「うん、もう大丈夫! アムは手術(しゅじゅつ)をしたので、しばらく入院することになったわ」ママが答えた。
「手術って?」
手術と聞いて、ぼくは胸がどきどき、張り裂(さ)けそうになった。
「手術って何? 何? どうしたの、アム? 大丈夫?」ぼくは矢継(やつ)ぎ早(ばや)に質問をした。
「もう大丈夫。手術は成功よ。アム、盲腸(もうちょう)だったの。院長先生が、しっかりと治してくださるわ」
「えっ、盲腸!?」
ぼくは驚いた。知らなかった。犬にも盲腸があるんだ。エッ〜、信じられない。理科の教科書にのっている人体の図が頭に浮かんだ。
違う、違う! 犬だ、アムは!
その日の夕方、ぼくは密(ひそ)かに、くりちゃん先生のところへ行こうと思った。一人で行ったことはないけれど、一度ママと車で行ったことがある。ぼくは自転車を飛ばした。勿論(もちろん)、ショウキには内緒(ないしょ)だ。
くりちゃん動物病院は市役所の近所、ピンクの建物ですぐ見つかった。しかし、堂々と玄関から入(はい)る勇気はない。横へまわって、窓から中をのぞいてみた。どこだろう、アムは? ぐるぐると診察室を端(はし)から探(さが)してみた。幸い、誰もいないみたいだ。