【前回記事を読む】内申書をこっそり開けると、担任は僕の性格を「幼稚」と書いていた。その後大学受験は全落ち…父には「廃人みたいな生活だ」と呆れられ……
序章
アメリカに行くと僕は皆に言ったが、いつの間にか僕の夢はもっと膨らんでいた。アメリカ大陸は北米大陸と南米大陸と、その二つを繋ぐ中米で出来ている。思い切って、その全部をバイクで走ると決めた。アメリカ国内だけをバイクで走るより、その他の国も走る方が面白そうに思えたからだ。バイクで海外を走った人達が書いた本から受けた影響だった。
旅の出発地点はアメリカの西海岸の都市ロサンゼルスが良いだろうと目星をつけた。日本に近く、バイクを日本から送り易い都市だからだ。
ロサンゼルスから北へ向かい、北極海まで走ろうと考えた。北米最北端まで行ってみたかった。最北端の次はアメリカ東海岸の大都市であり、僕の憧れの地ニューヨークを目指すことを考えた。そこから南に下って中米諸国を通り、出来れば南米大陸の最南端フエゴ島まで行きたい。
そしてそこから北上して、出発地点のロサンゼルスを目指す。それが出来れば、北米大陸と南米大陸を一周することになる。
僕の知る限り、北米大陸と南米大陸の両方を一周するバイク旅をした日本人はいなかった。その案は簡単ではないとは思ったけど、それほど深く考えて決めた訳でもなかった。情報が少ない分、実際の難しさを把握することも出来なかったので、人とは違うことをしてみたいという単純な動機が主だった。
それは固い決心というより、ともかくやってみたいという気持ちの方が強かった。本当に出来るのかどうか、考えても分からないのだから。
旅の相棒となるバイクは慎重に選んだ。燃料のガソリンを長距離にわたり補給出来ない場合を想定したので、燃費の良さを重視した。悪路を長く走る可能性も十分にあるので、本体が頑丈な造りであることも譲れなかった。サーキット場を走るバイクのような見た目のカッコよさより、砂漠を存分に走れる丈夫さが必要だった。
故障が少なく、簡単な構造であることも大切だった。なるべく自分で修理出来るのが望ましいからだ。持ち運ぶ予備部品が少なくて済むこと、旅先の現地でも部品が注文出来るメーカーのバイクである点も考慮した。
そして、それは単気筒で250ccのエンジンを搭載したホンダ製のオフロード用バイクだと僕は結論を出した。それに一番相応しいのが、当時発売されたばかりのXLR250BAJAだった。前方を照らすヘッドライトが二つ付いた外観も気に入っていた。僕は、ホンダ製のXLR250BAJAを新品で買った。