「どうぞ、玄関はこちらになります」

美羽たちは橋を渡ると、正面を直視できない吹雪のなか、さらに屋敷の入り口まで、石畳のつづくアプローチを歩かされる。

右手側には、橋を吊りあげたクレーンがライトアップされ、ふたりは寒さに身を縮こまらせながら、高岡の後ろへとつづいた。

「うっわー。ホントに武道館クラスね」

「とても個人の家とは思えませんねー」

近づくにつれ、徐々に迫ってくる感じはあった。けれども、こうして眼前にまで迫ると、まるで自分が小人にでもなったと勘ちがいしてしまうほど、圧倒的なスケールだった。

「アスレチック迷路じゃないよね。むかし実家の近くにも、これくらい大きいのがあったよ」「へー、それまた、すごいっすね」

ホテルの入り口のように、ガラス製の戸が設けられた玄関ホールは、真南の方角となり、雄々しい馬の絵が描かれた衝立が中央に鎮座している。

ほかにも子どもの背丈はある長壺に、漆細工でできた大時計などなど、和を基調とした調度品がずらりと並び、『成金 屋敷 趣味悪い』で画像検索したら、トップに来そうな眩い光景だった。

「あたしの通っていたキャンパスって、田舎だったからこれぐらいは余裕であったよ」

「なんで張り合おうとするんですか」

ふたりは玄関に立ち、感想を言いあっていると、チョビひげをたくわえた初老の男性が走ってくる。黒い防寒着の下には、同じ色のフォーマルスーツを着ており、なぜかぐっしょりと濡れていた。

「こらっ、勝手に橋を操作するなと―。ああっ、失礼をいたしました。お見苦しいところを見せてしまいして」

最初は家人に向け叱ろうとしていた様子だったが、美羽たちに気づくと急に態度を変え、背筋を伸ばした。

「ご足労をいただき、たいへん恐縮でございます。私奴は山吹さまのお世話をしております島田と申します」

屋敷内において、忠実な執事といったところであろうか、柔らかな物腰で、うやうやしく一礼をする。

その挨拶を受け、美羽も襟をただし、自身の名を告げようとした瞬間。突として横にいた高岡が一歩、前に踏みだすと、手の平でふたりを交互に差し、勝手に紹介を始めた。

「志村さまが代理人としてご依頼いたしました、美羽瞳さまと、富戸木ナンチャラさまでございます」

「よろしくお願いいたします」

ふたりは同時に頭を下げ、同時に目が合う。あまり自分たちが全面に出てほしくない気配を察した。

「今日は一日中、雲も厚く、ご覧のような吹雪となりましたので、はたして無事に到着されるかと、心配しておりました」

「あたしも雪国の育ちですが、さすがに道中は難儀しました」

「ほう、どちらの生まれですか」

「同じ日本海側でも中部地方です。北陸の――」

 

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