そして、その予感は的中することとなる。

教育熱心な母と、それに無関心な父。創作物であれば、その子は猟奇殺人鬼に仕上がってしまうような最悪の環境に生まれてしまった私はその災難を一身に受けた。

そして、その環境に耐えられず簡単にはひしゃげてしまうような人間ではなかったからこそ、その苦しみが長く続いてしまった。こんな頑丈に作ってくれなくともよかったのに。もうちょっと軟弱に生まれても良かったのに。

いじめというのは、案外静かに始まる。

会話の輪から弾かれた。昨日まで隣に座っていた子が、次の日には遠い席に移っていた。名前を呼んでも振り向かれなかった。給食の時間、私の周囲だけが半径1メートルほどの無人地帯になった。

小学生は残酷だ。表面上の付き合いすら保たない。無視する。完全に、存在ごとなかったことにする。暴言も暴力もない。ただ、いないことにされる。それは殴られるより静かで、深く、じわじわと効く。毒が回るように。

それでも私は信じた。

「良い中学に入れば変わるから」

あの人はそう言った。私はその言葉に縋った。縋るしかなかった。

週5日、電車で1時間、夜11時過ぎまで。塾の自販機で初めて飲んだエナジードリンク。甘くて炭酸が強くて、脳がスパークするような感覚。でも飲み込んだ瞬間、少し霧が晴れた。あの人に見つかれば『化学物質』と怒鳴られるのは分かっていたから、鞄の奥にこっそり忍ばせた。

私はその頃にはもう、隠すことに慣れた子どもになっていた。なったというより、なるしかなかった。

そして、合格通知が届いた。あの人は泣いた。私も泣いた。ただ、2人の涙の理由は絶対に違った。

 

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