仕事が終わり、家に着くと、私はノートを一冊取り出し、悠希さんの現状と俊雄さんの現状を書き始めた。脳内でまとめる為ための作業だ。そこから突破口というか、悠希さんが本気で諦めてくれる道を探るために、これまでの経緯も書き出してまとめた。

悠希さんは俊雄さんを運命の相手と思っている。結婚をするために父親も巻き込んで手段を選ばない傾向がある。悠希さんには悪気はなく、天然だからこそ、私にも率直に『俊雄さんをくれ』と言ってくると判断できる。

一方の俊雄さんは、優しい上に、社長絡みという事が仇になって、悠希さんを強く拒絶できない。そして何より、押しに弱い結果、悠希さんと関係を持ってしまった。この事態は今後もあり得るかもしれない。 

じゃあ、私はどうすればいい?

私から悠希さんにアクションを起こす? でも、それで俊雄さんが会社に居辛くなる事は避けないといけない。悠希さんから何らかのアクションを起こされれば、俊雄さんに頑張ってもらう必要がある。悠希さんは常識がイマイチ通じない相手なので、確固たる信念で迎え撃たないといけない。

俊雄さんには……仕事とプライベートを切り離して、悠希さんをしっかり拒否してもらわないといけない。

「ふぅ。ま、こんな感じかな」

書き出した文章を読み返し、今できる事を確認できた。

「……俊雄さんは、今接待中かぁ。明日にでもこの内容を彼と共有したいな」

背伸びをして、そう呟くとスマホが鳴った。相手は……知らない番号だったので出るのを躊躇う。留守電に切り替わると、女性の声がした。

『もしもし、沢村亜紀さんのスマホでよろしいでしょうか? 田中悠希です。今、俊雄さんと飲んでいるんです。貴女とお話したい事があります。明日の夜、都合の良い時間を教えて下さい』

そこで通話が切れた。

「俊雄さんと飲んでる!? どういう事!? 今日は接待のはず……。あ、でも彼女は社長秘書だっけ。接待の場にいてもおかしくないか。……アクションを起こされたら、こちらも返さないとね」

私は直ぐに、明日の十八時なら、とショートメールを送った。すると、『では十八時にお宅にお邪魔いたします』とこれまた直ぐにショートメールの返事がきた。

決戦は明日の夜! 絶対に俊雄さんは渡さない……!

 

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「ほら、こことか」と痕をなぞる社長令嬢に震えた……「嘘言わないで!」と叫ばずにいられなかった

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